2003-11-01から1ヶ月間の記事一覧

つげ義春『貧困旅行記』

不思議なことに、ときに見栄張って分不相応なところで豪遊してみたくなる。そのあとの白じらした自分自身への苛立ち。ところが逆に自虐的に、自分自身を失くしてしまって、《漂泊のこころいまださめず》と下向きのベクトルに身をまかせてみたくもなる。その…

林忠彦『林忠彦の世界』

少し前にまごまご日記にも書いた写真家林忠彦の東京都写真美術館での写真展の図録。『カストリ時代』や『文士の時代』などの写真集はもうほとんど手に入らないだろうし、コレクターでもないのだから、このような図録というのは貴重。 かのルパンの太宰治はも…

谷崎潤一郎『瘋癲老人日記』

キショーっ!とか、この死に損ないのエロ爺ぃなどと言うてるうちは、まだまだケツが青いのだよ。なんて書いて、はっと気づく。予もかなり瘋癲老人の域に達してきた。究極の老後。憧れる。 ヲカシナコトダガ、痛イ時デモ性慾ハ感ジル。痛イ時ノ方ガ、一層感ジ…

川端康成『眠れる美女』

若い処女が、処女だぞ、処女!が全裸で眠っているとなりで添い寝をするってえのは非常にエッチ臭いだろ。しかもエッチしたら、ダメなんだぞ。たちの悪いいたづらはアカンのだぞ。眠っている女の子の口に指を入れようとなさつたりすることもいけませんよ。を…

谷崎潤一郎『蓼喰ふ蟲』(1929)

ぎゃふん。文章、構成の上手さがどうこうとか、決して言えませんって。す、すごすぎる。話の中に文化論であるとか、もちろん恋愛観であるとか、織り込まれているのだけれど、その論考のバックボーンの大きさに畏れおののくばかり。最近の作家のってその逆な…

須藤英一『日本百名道』

須藤さんは個人的に知ってるからあんまり言えないんだけど(^_^ゞ ちょっと優等生の解答を見せられたようでもの足りない。たしかに外すに外せない道ばかりなんだけれど、もっとバイク乗りという視点からの思い入れの込められた道がリストアップされていてもい…

石井隆『名美』

こんな腰痛いときに読んでてどうすんだモンのエロ劇画でありますが、8編どれもがレイプ、あるいはそれに近いのであって、これって、男が女を犯すことでひたすらに下降していくというか、だからって女が下降してしまうってわけでなくて、男にとっては究極の…

川端康成『住吉』(1949)

短編だから(^_^ゞ 継母いじめの『住吉物語』を種に、川端康成のなんとも言えない女性観というか、屈折というか、要するに川端康成流の変態性がほの見える。ほんま短編のくせに重いの。

川端康成『禽獣』(1935)

川端康成が自作中でもっとも嫌った作品で、自己嫌悪の対象として主人公に投影したとされる。禽獣というのはいまでいうペット。小鳥、犬、などの禽獣に対する愛玩の裏返しとしての冷酷さが、女に対してまで及んでくるという川端康成ならではの耽美さが、この…

川端康成『水晶幻想』(1931)

わけわかんねぇ(^_^ゞ 犬の人工授精。発生学の研究に、精子、卵を顕微鏡で見る夫。三面鏡を見る女。人間の体外受精は?鏤められたことばの洪水。うはぁ〜〜降参。 ごくごく日本的な作家(それ故にノーベル文学賞を受賞したんでしょ)、川端康成が、ヨーロッ…

村上龍『はじめての夜 二度目の夜 最後の夜』

これってタイトルと構成でとても損をしている。このいかにもって感じのタイトルではちょっとパスしとことなるわ。それにレストランの料理で章立てしてるの、これもずいぶんです。《茨城産 仔牛とチンゲン菜のプレゼ シャンパン風味》をいをい、やめてくれ。…

谷崎潤一郎『卍(まんじ)』(1931)

同性愛の話だとは誰でも知ってても、読んだことないやろ。かくいうボクも読んだことなかったのだ。そして読むからには、舊かなで読もうね(笑) 上手いなぁ、むちゃくちゃ。これまで何度も上手いというのは聞かされてるし、当たり前のことながら評価はでき上が…

荒木経惟 / 町田康『俺、南進して』

まずは荒木経惟の写真ね。新世界、天王寺、銀橋、安治川、南霞町、和泉府中?...と、大阪ロケ。モデルは町田康。うーん、いつもながらにいいねぇ。って感心してるのは、ボクのまわりでほとんど同意してくれんの。ぼてっ腹のおばちゃんの写真が入ってるからか…

田口ランディ『コンセント』

いちおう読みましたけどね、むなしいなぁ....話がせつないであるとか、虚無感に貫かれているというのじゃなくて、話そのものが空嘘(←あえて口偏つけておきました)。ことばに重さがない、すこすこなんだ、ことばそのものが希薄なので、それらをいくら重ねられ…

吉本ばなな『ハネムーン』

出てくる人物に実体感が非常に希薄。とくに一人称小説のわたし=まなかの相手である裕志が見えてこないのはどうしようもない。だからこの二人に関わる人物も見えない。顔すらも浮かんでこない。と、なると、あちこちに撒き散らされたことばもふわぁーっと通…

泉鏡花『眉かくしの霊』(1924)

旅先に出て霊に出会う話。ってその旅先が奈良井だったから、何となく知ってるような。でもこれまで何度も奈良井に行ってながら、この話の舞台が奈良井だと知らなかったとは... で、奈良井に行く前に松本に行ってるんだけど、松本の宿の無愛想なことをしきり…

泉鏡花『高野聖』(1900)

あらかたの話はいろいろ聞き知っていても、きっちり読んだら、やっぱりおもろいなぁ。しかもちゃんと舊字舊かなのテキストで。ここらは舊字舊かなでないと気分が出やんでしょ、なんて、ところどころ読めなかったりもするんだけど。 蛭の森のむごたらしさなん…

村上龍『ライン』

20人のダークサイダーがすれ違うかのように繋がっていく。そのこと自体が1本のライン。ひさびさの村上龍節を読んだような。あ、でも『トパーズ』『ピアッシング』『白鳥』なんかの流れだよな。ラストの「人間は他人によって自分を確認している」 SMの仕事…