2003-09-01から1ヶ月間の記事一覧

上村一夫『密猟記』

これはどこに連載してたんだろ。単行本が71年の発行だから、その前、たぶんピークを迎える前の連載だったんだろうか。絵師と言われた上村にしてはちょっと絵が荒い。上村の描く女の妖しさはまだ見出すことができなくて、それより「昭和枯れすすき」的暗さが…

石内都『連夜の街』

あとがきより「人間のいとなみとしての象徴的建造物は、時代の現せ身の切ない美しさと醜さが表面に浮き上がり、(中略) 欲情に近い感覚があるのかもしれないとフッと思う。」「時代とともに形相は変化し、厚化粧を施されてこその街なのだから、そのたたずまい…

杉浦日向子『東のエデン』

明治初期、いまだ徳川が抜けきらず、激しく世の中が動いていた頃にテーマを求めたのがおもしろい。いまどきのお坊ちゃまには、なんがいいたいの?とぷいっと捨てられそうだけれど、ま、立ち読みしてるようじゃね。実際、ボクも冒頭の『東のエデン』ではぽっ…

伊達一行『沙耶のいる透視図』

すばる文学賞。ハダカ専門の写真家と、雑誌編集者神崎、神崎が連れてきた不感症の沙耶の危ない関係。あ、そっか、高樹沙耶がこれの映画化でデビューしたのか。『限りなく透明に近いブルー』の時代を移したような、破滅に向かう感覚をどう評したらいいのか。2…

森山大道『犬の記憶 終章』

『犬の記憶』から10年ほどおいて、朝日カメラに連載された。内容的には大差はなくて、時間軸でなく空間によって再構成されている。さすがに『犬の記憶』ほどの息詰まるほどの迫真感はないけれど、「路上」をボクに再び意識させる手応えは十分すぎる。「ヨコ…

南伸坊『仙人の壺』

中国の諸怪志異に原典をとった漫画と南伸坊自身による蛇足的解説。絵そのものは上手くないけど味があり、いわゆるヘタウマ。文章もつたないけれど、単なる解説ではなくて南伸坊自身の世界にひきづりこんでるところがいい。とくに最初のぐうたら仙人の話は、…

上村一夫『怨獄紅』

これはたしか漫画アクションの連載だったはず。連載の時に夢中になって読んだ記憶がある。上村はこうした変質した性愛を描かせばほんと天下一品。どれもが70年代っぽい死の腐臭を漂わせている。なかでも、その当時に「躑躅」を「髑髏」と混同したのだが、い…

東陽片岡『されどワタシの人生』

おかしくも哀しい下町人生を速射砲のごとくにぶっぱなす。みっちり書きこまれた絵にぎっしり綴られた文字、例えば《ワタシが昔、駒込のボロアパートに住んでた頃、しばしばこのように明け方近くにアエギ声が聞こえてきました。しかし、後で解ったのですが、…

赤瀬川原平『老人とカメラ 散歩の愉しみ』

トマソン分類不能な小ネタ集。《トマソン》をぶちあげた頃のインパクトはなく、どちらかというと《老人力》によるだんご理屈が多い。写真集として見ても、赤瀬川流の《老人力》写真集で、をを〜っとうならせてくれる写真もほとんどなし。20030922 Mon1998 実…

花輪和一『刑務所の中』

獄中記にありがちな湿った暗さや恨みつらみも感じられず、かといって優良徒刑囚(花輪がそんなはずなかろ(苦笑))としておつとめいたしましたなどというさぶりも一切なく、むしろ人生のひとつの経験をストレートに表現されていてむちゃくちゃにおもしろい。…

上村一夫『螢子』

原作が久世光彦で、《昭和叙情歌50選》とサブタイトルにあるように、女性?とかの連載にあたって、毎回、昭和の歌謡曲をモチーフにして、全50回で話を構成している。ここでの選曲で、ボクの好みで話したらアカンだろうけれど、ををーっと驚愕させられるよう…

唐十郎『紙女房 楼閣興信所通信』

我らがヒーロー田口クンがマネキンさちこを連れて、相変わらずどろんどろんのてけれっつのぱっ唐的世界を巡る連作9話。「第六話 植物中枢」が一番好き20021008 Tue1986 文藝春秋

花輪和一『刑務所の前 第1集』

『刑務所の中』に入る以前の、何して懲役3年を喰らったかを、『〜の中』のタッチで克明に。が、その話に、いつもの花輪和一の寓話をかぶせてくるなんて、やっぱり花輪は天才です。花輪寓話と刑務所前がどこかで接点をもちそうでなかなかはっきりつながらな…

小野塚カホリ『ジョルナダ』

いいなぁ、やっぱり小野塚カホリ。えーっと短編が5本。戻るに戻れない過去をひきずりながらも過去を立ちきる、なんて書いたら月並みだけれど、こういうふうにぴーんと弾いてくれるってのもそうそうないな。ざわざわ音がする。おっさんぽく表現してみると、…

小野塚カホリ『凍み』

なんでこの年になってまで萌えてしまうんだかわからないけど、ボクの小野塚カホリ萌えは相変わらず続いておって、やっぱりこの『凍み』でもときめかされること。マザコンに浸ることのできないシスコンにいたく感情移入してしまうのであった。セックスとは傷…

小野塚カホリ『ロールスロイスラジオ

いつも思うことだけどセックス描写というのは絶対に女のほうが卓越してる。笠間しろうじゃ勃たないです。続けておのづか読んで激しく欲情致しておるマスター。ツボをこころえているというか、SMモンじゃないけど、《男S,女M》というみせかけの構図を見…

山本夏彦 / 久世光彦『昭和恋々』

「次の写真を見て500字程度で思うところを記せ。」という国語の模範解答。まぁよく500字程度によくぞこれだけ織込める、さすが久世だわと思えたのは数編まで。同じようなのが20編ほども並べられると、手の内が読めてしまっておもしろくもなんともない。叙情…

都築響一『珍日本紀行 西日本編』

あちこちにある瑣末な記念館、こういう瑣末記念館というのはアホくさくておもしろいはずなんだけれど、入場料払ってまでというバカくささが先に立って、結局パスしてしまっている。そういうケチ根性のおかげで、いかにもったいないことをしているか、がつぅ…

つげ義春『腹話術師/ねずみ』

貸本漫画最晩期(1960〜5)の短編12編。手塚治虫、さいとうたかをなどの影響をもろに受けてるけれど、青春ものやSFものなどつげ義春らしくない(?)作品であっても、不条理感はやっぱりつげ。表題の「腹話術師」について、つげ自身は「どこがいいのか自分では…

荒木経惟・杉浦日向子『東京観音』

まずは金ぴかの表紙カバーがかっこいい。で、これを夏に東京お徒歩に出かける前に見てればよかったと、悔しがることしきり。深川の芭蕉の像に抱きつくように日向子が写ってるのだ。これを見てから気をつけていたらやけに露仏が多い。先日も尼崎お徒歩に行っ…

ルーサー・リンク 著 / 高山宏 訳『悪魔』 ??中世美術に見る悪魔の図

ほとんど読んでなひ(^_^ゞ ふんだんに挿入されてる図像を眺めて、さらにランブールや、ファン・アイク、ジオット、シニョレルリを、WebMuseumなんかで眺める。ゆっくり読めたらもっともっともっとおもしろいんだろうけれど、そのためにはもっと西洋史勉強し…

上村一夫『一葉裏日誌』

一時の上村一夫ブームだったころに比べると、ずっと落ち着いた、ある意味で何かを見てしまったような感じがする。今、思えば、86年の急逝を彼自身悟っていたかのよう。 樋口一葉をモデルにした『一葉裏日誌』は3話で終わってしまって、どこかアイデア倒れの…

皆川博子『ジャムの真昼』

Helmut Newton, Robert Doisneau, Gerard DI-MACCIO, Ralph Gibson, Hiroshi Nonami, Eugene Atget, JAN SAUDEK 7つのそれぞれの写真、または絵からインスパイアされた短編7本。単純には幻想文学に取り込まれるだろうけれど、かなりしたたかに鋭い。写真(…

唐沢なをき『学園天国』

あるあるあるある、そんなことようやった。おるおるおるおる、そんな教師ごろごろおるるるぅ。フィールドワークと称して、校内の教師の生息を調べてまわるの、おりますねぇ、権藤先生。ひとつ、訂正しといたげます。「除法定理」じゃなくて「剰余定理」だよ…

上村一夫『凍鶴』

1974年から1980年ビッグコミックに断続的に連載。全14話。実は全16話あったらしく、単行本では2話カットされてしまっている。 花街に売られて来て、仕込み子として、一人前の芸者に、それ以上に一人の女に成長していく前半がいい。後半は上村一夫の女性像が…

荒木経惟/陽子『10年目のセンチメンタルな旅』

二人でフランス、スペイン、アルゼンチンと旅行したときの旅行記を陽子さんが書いてる。アラーキーが外国語などまともにしゃべれるわけがなく、陽子さんまかせなのだが、これこれを伝えてくれとアラーキーが言うのに、妻の私がそんなことを訳して言えるわけ…

森山大道『写真から/写真へ』

80年代に『写真時代』に連載されたのをまとめたもの。『犬の記憶』のような切迫感はない。荒木経惟とは別の意味で韜晦の人間なんだな。なんだかんだと言いながら、まさに犬のようにテリトリーを毎日嗅ぎ回れるというだけですごいわナ。1995 青弓社

平口広美『コスモスの丘』

バイオレンス・SM・エログロ・ナンセンス,,,,でも抜けない(汁) 世のPTAの眉をひそめさせる漫画のオンパレード、がうれしい。よくもまぁ、こういとも簡単に開股海老縛りなんぞとあきれかえるが、基本的に「結局女にはかなわないって強く思ったね。」…

谷弘兒『怪傑蜃氣樓』

暗黒の帝王、その名前がドクトル・アレクサンドロス・サミルノフ,,,いいねぇ、この名前。話はむちゃくちゃでござりまするが、少年王者とスーパーマンと、それからなんだ? ごちゃまぜにしたような懐かしいテイスト。『Nyogtha』は日野日出志にも通じるよ…