2004-06-01から1ヶ月間の記事一覧

沢木耕太郎『天涯 第二』

『天涯』シリーズとしてすでに何巻か出ているようだけれど、ボクは知らなかった。これが初めて「第二」とついてるのも気がつかなかった。写真集としてはふつう。ま、元々、写真家が専門ってわけじゃないから。ちょこちょこ、いいなぁって思う写真もあるけど…

荒木経惟 / 森まゆみ『人町』

谷根千ネットの森まゆみとアラーキーが、彼女の地元=谷中・根津・千駄木を、月1回1年かけて、歩きまわり撮り集めた笑顔だらけの写真集。ボクも、今年の春に数時間だけど、谷中を歩いていて、ちょうどお花見のときね。知った場所とか出てきてうれしい。 「…

野坂昭如『万婦如夜叉』(1971 「オール讀物」)

女に対する妄想、題名とおりにすべての女は夜叉のようであって、その前で男はどうしようもない存在だと描きあげる。あげくに先妻との間の息子と妻が「デキ」てんじゃないかという妄想にとりつかれる男。家庭を舞台にした壮絶な「反米闘争」。野坂にとっての…

野坂昭如『不能の姦』(1972 「別冊文藝春秋」)

祖母に養子として育てられた男、祖母のまんこを覗き見ることによって成長し、満足なセックスができなくなってしまう。男を、情けなく、情けなく描き出すことで、野坂自身を育て上げてきた時代を否定している。 閉じているといっても、いかにもやわらかそうな…

野坂昭如『トテチテタ』(1968 「小説新潮」)

戦後20年経っても野坂は戦争にこだわり続けていた。戦争を越えてもなお、突撃ラッパとなったラッパを磨き続けることでしか存在を確かめられない男。『トテチテタ』という題名の響きは太宰治の『トカトントン』を思い起こさせる。 あの時、中に入っていた女学…

野坂昭如『マリリン・モンロー・ノー・リターン』

ちょうどこの1972年頃、野坂全盛で、同名の曲まで歌ってたのだ。その歌を死ぬくらい聞いてはいたのに、小説のほうは読んでなかった。『てろてろ』とか『エロ事師』とかは読んでたのに。 やっぱり野坂節ばりばりで、野坂にとってはモンローってのは女神様だっ…

野坂昭如『マリリン・モンロー・ノー・リターン』

『マリリン・モンロー・ノー・リターン』『水の縁し』『旅の終り』『トテチテタ!』『万婦如夜叉』『不能の姦』6編からなる短編集。装丁横尾忠則 (1972 文藝春秋)

山田詠美『ひざまずいて足をお舐め』

山田詠美は好きでいっぱい読んでいるけれど、『ひざまずいて足をお舐め』はタイトルがアレなので、本屋で買えないという可愛いボクちゃんがいた。貸してやったよ(笑) 実はボクが最初に読んだ詠美は、デビュー作の『ベッドタイムアイズ』(85)でも、直木賞の『…

藤沢周『雨月』

単に読み物としてはおもしろいんだろうけれど、セックス、ドラッグ、憑依、AVなどと記号を並べられるとつらいものがある。結局のところ、キーパーソンとなる田中裕子がどこからやってきてどこに消え去ったのかわからないまま。それはそれでいい、いやそう…

唐十郎『二都物語・鐵假面』

『二都物語』は1972年状況劇場の芝居で、これを札幌に呼んだこともあって、ボクには思い入れが深い、深すぎる。いまはもうだいぶ忘れてしまったけれど、その当時はほとんど台本まるごと憶えていた。 この戯曲の中で万年筆が出てくるが、たしかこの『二都物語…