2004-06-24から1日間の記事一覧

野坂昭如『万婦如夜叉』(1971 「オール讀物」)

女に対する妄想、題名とおりにすべての女は夜叉のようであって、その前で男はどうしようもない存在だと描きあげる。あげくに先妻との間の息子と妻が「デキ」てんじゃないかという妄想にとりつかれる男。家庭を舞台にした壮絶な「反米闘争」。野坂にとっての…

野坂昭如『不能の姦』(1972 「別冊文藝春秋」)

祖母に養子として育てられた男、祖母のまんこを覗き見ることによって成長し、満足なセックスができなくなってしまう。男を、情けなく、情けなく描き出すことで、野坂自身を育て上げてきた時代を否定している。 閉じているといっても、いかにもやわらかそうな…

野坂昭如『トテチテタ』(1968 「小説新潮」)

戦後20年経っても野坂は戦争にこだわり続けていた。戦争を越えてもなお、突撃ラッパとなったラッパを磨き続けることでしか存在を確かめられない男。『トテチテタ』という題名の響きは太宰治の『トカトントン』を思い起こさせる。 あの時、中に入っていた女学…

野坂昭如『マリリン・モンロー・ノー・リターン』

ちょうどこの1972年頃、野坂全盛で、同名の曲まで歌ってたのだ。その歌を死ぬくらい聞いてはいたのに、小説のほうは読んでなかった。『てろてろ』とか『エロ事師』とかは読んでたのに。 やっぱり野坂節ばりばりで、野坂にとってはモンローってのは女神様だっ…

野坂昭如『マリリン・モンロー・ノー・リターン』

『マリリン・モンロー・ノー・リターン』『水の縁し』『旅の終り』『トテチテタ!』『万婦如夜叉』『不能の姦』6編からなる短編集。装丁横尾忠則 (1972 文藝春秋)