野坂昭如『不能の姦』(1972 「別冊文藝春秋」)

祖母に養子として育てられた男、祖母のまんこを覗き見ることによって成長し、満足なセックスができなくなってしまう。男を、情けなく、情けなく描き出すことで、野坂自身を育て上げてきた時代を否定している。

閉じているといっても、いかにもやわらかそうな印象で、太ももを少し開けば、そこは動きにつれ、花弁のほころびるように、花芯をあらわにするのだろう。雄二は、祖母をそのままにして、腹ばいになり、寝相の乱れるのを待った、ひだにくるまれた中を見なければ意味はない、重みがかかって畳に押しつけられた男根は快楽の予兆よりいたみが先き立つ、そろりと腰を浮かし、夏がけのうすい布団をまるめこみ、股間にあてる、知らずに、みるみる轟然たる印象で、未知の感覚が背筋をはいのぼり、後頭部に達した時、男根激しく脈を打った。


雄二は、時に、露骨なことがらを性科学用語にカムフラージュして口にし、その反応、それは急にまばたきが多くなったり、深い息を吐いて、唾を飲みこんだりする学生を、観察し、今この女の陰部は、色づきうるおいを増しているのだろうと、ひそかに考え、これはすべて、妻を抱くためだった。妻は相変わらず、石のように冷たいままだが、週に二度は求め、その時のために、雄二は、蟻が餌を溜めこむ如く、自らの刺激となる情景なり、その表情を脳裡に刻みこんだ。それはまったく強制される悪癖と同じことで、雄二は妻を抱きつつ、必死にバレーボールでジャンプした学生の、ひるがえったスカートや、「愛する人のためなら何でもします」といった学生に、「君のヴァギナを見たいといったら?」と質問し、虚をつかれとろんとうるんだ瞳を追って果てるのだった。