森山大道 『ブエノスアイレス』

村上龍『半島を出よ』

村上龍『半島を出よ』上(2005 幻冬社)下(2005 幻冬社)

三島由紀夫『午後の曳航』(1963 講談社)

ルイス・ジョン・カルリーノ監督、サラ・マイルズ、クリス・クリストファーソン主演で、日米合作で1978年に映画化されたが、無理だろ。だいたい能天気なアメリカ映画に三島を表現できるわけないでしょw ボクの父親が観てきて「つまらんかった」と言ってたの…

三島由紀夫『音楽』(1964 婦人公論)

1972年にATGで増村保造監督で映画化されているのに、どうも観てないなぁ。実相寺昭雄監督の『哥』とごっちゃになってる。ひょっとしたら観たかも 「音楽」が聞こえない=オルガズムを感じない麗子の治療に関わった精神科医師を中心に話が進む。それにバタイ…

『マドンナの真珠』

はじめてガラス箱の内部をのぞき込んだユラ子は、たがいに逆方向を向いてぴったり重なり合った雌雄の二匹が、どうしても二匹とは思えず、ひとつの見事な、有用性をはなれた彫刻品が砂の上に置かれている思った。そのまま、じっと動かない。ユラ子が固唾をの…

『陽物神譚』

その二つの乳房は左側が昼を宰領し、右側が夜を宰領する。右の乳房は殺人と男色を禁止し、左の乳房は自殺と異性との交媾を禁止する。言葉を換えれば、昼の世界では殺人と男色が許容され、夜の世界では自殺と異性同士の交媾が許容される。そして一方が許され…

『犬狼都市(キュノポリス)』

「ファキイル」 ふと、麗子は目のなかにある衝撃を受けた。微細な狼が敏捷な身のこなしで、自分の目のなかに飛びこんできたように感じたのである。しかし彼女の瞬間的な印象の通り、はたして石の内部を脱け出した狼が、麗子の瞳孔のなかに飛びこんできたのか…

澁澤龍彦『高丘親王航海記』

澁澤龍彦の遺作。この『高丘親王航海記』を執筆と同時に、喉に異常を知り、気管支切開手術も受けている。これの構想はすでにあったはずで、まさに遺書として著したと言ってもいいんじゃないかって気がする。それだけに、読んでいると、何とも言いようのない…

『狂った生きもの』

生きるということ。そして死ぬということ。誰一人そこから逃れることはできない。私たちはこの世界にたった一人でやってきて、立った一人で去っていくのである。そのほとんどが寂しく、おびえて、人生の大半を無駄に送るのだ。……いまこうして生きていても、…

チャールズ・ブコウスキー『ありきたりの狂気の物語』

チャールズ・ブコウスキーの短編34編

村上春樹『海辺のカフカ』

内に向かう思索というといいのか、それがほとんど間断なく出てくるから、読んでるほうも疲れます。森山大道のマネして言ってみると「そんなに思い悩んでいたらツライだろ?春樹クン」 が、作者と格闘してみるのも、疲れはするけれど、スポーツのあとの汗のよ…

藤原マキ『私の絵日記』

5年前(1999年)に亡くなったつげ義春の奥さん=藤原マキの絵日記。やっぱり似てくるのか、絵のタッチはつげ義春によく似ていて、つげ義春を可愛くしたような絵。 1972年頃だったか、つげ義春が不安神経症となる頃のつげ家のできごとをマキさんのサイドから見て…

『ジャパン・アヴァンギャルド』

60年代後半から70年代にかけての状況劇場、天井桟敷、68/71(黒テント)のポスター集。1ページ1枚で100枚のポスターがA3サイズで集められている。 思い起こすと、この時代がサブカルチャーにとってもっとも熟していた時期だったのだ。横尾もすごいけれど、粟…

花村萬月『ジャンゴ』

ジャンゴというのはジャンゴ・ラインハルトから。左手の薬指と小指がない伝説のギタリスト。が、花村萬月の描いたジャンゴは愚にもつかないジャンゴになりはてた。ジャンゴ・ラインハルトのファンの人は読まないほうがいい。火を着けたくなる。ずばりドラッ…

藤沢周『箱崎ジャンクション』

過去を背負ったタクシードライバー室田と川上。二人はお互いに入れ替わることで、自分自身では決着をつけることができなかった過去へ決着をつけようとする。 前半はまるで首都高の箱崎ジャンクションの渋滞につかまったかのようにかったるいが、中盤からがぜ…

藤原新也『風のフリュート』(1998 集英社)

藤原新也自身の小説『ディングルの入江』からごく少しだけ抜粋された文章がはさまった写真集。写真と文章そのものの直接の関連性はないが、冬のアイルランド、それもヨーロッパのもっとも西に位置するディングル半島を旅したときのもの。 ところでディングル…

金原ひとみ『アッシュベイビー』

きゃはっ、ちょっと引用が長すぎたか。あ、でもこの部分の疾走感はむちゃくちゃに気持ちがいいんだもん。止まらない、止まらない。たぶんね、書きだしたら止まらなかったんだと思う。だから読みだしたら(写しだしたら)止まらないのだ。きっとな、処女作の『…

江角マキコ『燃えるゴミ』(1997 角川書店)

これまでの江角をモデルにした写真(篠山紀信など)に、彼女の「燃えるゴミ」という「独り言のようにノートに書き、人と向き合うことから逃げて」いたことばを集めたもの。江角なら、もっとおかしなことを書いててもいいのに、意外とまとも(笑) 父親を突然亡…

アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言 / 溶ける魚』

シュルレアリスムって、いくら歳をとったからってわかるもんでもないらしいw 新聞などから適当に言葉を切り抜いてきて、それをアットランダムに並べ替えてみる。と聞いて、自分でもやってみたことがある。30年も前の大学生の頃に。すっかり『ダダ宣言』だと…

花輪和一『朱雀門』

胸におダニ様を飼い育てる『崇親院日記』や、尻に尻狗が取り憑いた『狗尻』、この突拍子もない発想は花輪をおいてほかにないだろ。それがまことしやかに語って(描いて)しまうのが、これまた花輪ならでこそ。どこかでにやっと笑ってしまってるのだけれど、「…

チャールズ・ブコウスキー『ブコウスキーの酔いどれ紀行』

ブコウスキーはハチャメチャでおもろいという話は聞いていた。前からなんか読もうと思っていた。で、手に取ってしまったのがこの『酔いどれ紀行』。たぶんブコウスキーで最初に読むべき本ではないのかもしれない。 もっともっと難解きわまりないのかと予想し…

丸尾末広『笑う吸血鬼2 ハライソ』

2003年のヤングチャンピオンに13回にわたって連載したのを1冊にまとめた。B5サイズででかいからね、迫力満点。吸血鬼譚だから、推してしるべし。決して良い子は見てはいけませぬ。 12章のクライマックスで、10月の桜の狂い咲きから、一転、焼け跡を連想させ…

団鬼六『不貞の季節』

廣木隆一監督で大杉漣主演の映画『不貞の季節』の原作。 団鬼六の自伝小説ではあるが、どこまで本当だかどうだか。妻が自分の部下と不倫してしまって、それをその部下自身から聞かされる。聞くことによって、自分自身をサディスティックに責めていく自虐性。…

団鬼六『美少年』

『不貞の季節』『美少年』『鹿の園』『妖花―あるポルノ女優伝』の4編、私小説からなる (1997 新潮社)

甲斐扶佐義『ぼくの散歩帖 地図のない京都』(1992 径書房)

この前、京都出町柳のほんやら洞に行ったとき、たまたま甲斐さんが居合わせた。ちょうど一緒に行った猫好きの彼女に甲斐さんの『猫ノ泉』をプレゼントしたところだったので、「サインしてもらい」と勧めた。 甲斐さんに「サインお願いします」と頼むと、彼は…

沢木耕太郎『天涯 第二』

『天涯』シリーズとしてすでに何巻か出ているようだけれど、ボクは知らなかった。これが初めて「第二」とついてるのも気がつかなかった。写真集としてはふつう。ま、元々、写真家が専門ってわけじゃないから。ちょこちょこ、いいなぁって思う写真もあるけど…

荒木経惟 / 森まゆみ『人町』

谷根千ネットの森まゆみとアラーキーが、彼女の地元=谷中・根津・千駄木を、月1回1年かけて、歩きまわり撮り集めた笑顔だらけの写真集。ボクも、今年の春に数時間だけど、谷中を歩いていて、ちょうどお花見のときね。知った場所とか出てきてうれしい。 「…

野坂昭如『万婦如夜叉』(1971 「オール讀物」)

女に対する妄想、題名とおりにすべての女は夜叉のようであって、その前で男はどうしようもない存在だと描きあげる。あげくに先妻との間の息子と妻が「デキ」てんじゃないかという妄想にとりつかれる男。家庭を舞台にした壮絶な「反米闘争」。野坂にとっての…

野坂昭如『不能の姦』(1972 「別冊文藝春秋」)

祖母に養子として育てられた男、祖母のまんこを覗き見ることによって成長し、満足なセックスができなくなってしまう。男を、情けなく、情けなく描き出すことで、野坂自身を育て上げてきた時代を否定している。 閉じているといっても、いかにもやわらかそうな…

野坂昭如『トテチテタ』(1968 「小説新潮」)

戦後20年経っても野坂は戦争にこだわり続けていた。戦争を越えてもなお、突撃ラッパとなったラッパを磨き続けることでしか存在を確かめられない男。『トテチテタ』という題名の響きは太宰治の『トカトントン』を思い起こさせる。 あの時、中に入っていた女学…