上村一夫『凍鶴』

 1974年から1980年ビッグコミックに断続的に連載。全14話。実は全16話あったらしく、単行本では2話カットされてしまっている。
 花街に売られて来て、仕込み子として、一人前の芸者に、それ以上に一人の女に成長していく前半がいい。後半は上村一夫の女性像が描かれ、同時に読んだ『一葉裏日誌』にも通じる。
 一方で日本が戦争にどんどん傾斜していく昭和10年代をにおわせながらも、この『凍鶴』なんかのほうが妙な気負いがなくていいな。