上村一夫『一葉裏日誌』

 一時の上村一夫ブームだったころに比べると、ずっと落ち着いた、ある意味で何かを見てしまったような感じがする。今、思えば、86年の急逝を彼自身悟っていたかのよう。
 樋口一葉をモデルにした『一葉裏日誌』は3話で終わってしまって、どこかアイデア倒れの感がなきにしもあらず。が、ビッグゴールドに掲載されたのが、84/12/8、85/4/8、85/7/18、ということからすると、未完に終わってしまったと言うべき。せめて10話ほど拡がっていればという気がする。
 『帯の男』は6話で、女の目から見た女を描いた『一葉裏日誌』に対して、男の目から見た女を描いてるだけに、彼自身のストレートな思い入れが表れてるように思う。