泉鏡花『高野聖』(1900)

 あらかたの話はいろいろ聞き知っていても、きっちり読んだら、やっぱりおもろいなぁ。しかもちゃんと舊字舊かなのテキストで。ここらは舊字舊かなでないと気分が出やんでしょ、なんて、ところどころ読めなかったりもするんだけど。
 蛭の森のむごたらしさなんて圧巻。白痴が出てくるのってさぁ、デビッド・リンチばりで、いや、リンチが真似したんじゃないのって(笑) 女の家の下の水のところでの妖しさってほんとたまんねぇ。

唯一筋でも嚴を越して男瀧に縋りつかうとする形、それでも中を隔てられて末までは雫も通はぬので、揉まれ、揺られて具さに辛苦を嘗めるといふ風情、此の方は姿も窶れ容も細つて、流るゝ音さへ別様に、泣くか、怨むかとも思はれるが、あはれにも優しい女瀧ぢゃ。