泉鏡花『眉かくしの霊』(1924)

 旅先に出て霊に出会う話。ってその旅先が奈良井だったから、何となく知ってるような。でもこれまで何度も奈良井に行ってながら、この話の舞台が奈良井だと知らなかったとは... で、奈良井に行く前に松本に行ってるんだけど、松本の宿の無愛想なことをしきりにぼやいてるのには笑ってしまう。
 はは、どこが霊なんだいと思っていたら、中盤から。一気にラストの情景はすごいやな。座敷が一瞬にして桔梗ヶ池に変わるなんか、そこらのホラー映画なんか太刀打ちできんよ。そして霊のなまめかしさときたら。ん〜、こんな女の霊となら混浴してみたいものだ。と、いみふめ

トーンと灰吹の音が響いた。
 屹と向いて、境を見た瓜核顔は、目ぶたがふつくりと、鼻筋通つて、色の白さは凄いやう。−氣の籠った優しい眉の兩方を懐紙で、ひたと隠して、大きな瞳で熟と視て、
「……似合ひますか。」