2004-03-03から1日間の記事一覧

中上健次『ふたかみ』(「文學界」 1985.2)

中上版『春琴抄』 「立彦、ずっとわたしの見た物と同じ物見えたんやのに、他所行ておかしいなった。眼を潰したろ。立彦、それの方が似合うよ。綺麗な顔してるから、化粧して、女の着物きせて、それでここへ住ましとくん。昔やったら、そうしょうれ、と言うた…

中上健次『刺青の蓮花』(「新潮」 1985.1)

究極のエロティシズム。中上健次の重要なアイテムのひとつが「血」であることに改めて気づかされる。SMへとなだれ込んでいくが、それも当然の帰着点かもしれない。これこそが日本のSMの極致。 女が十吉の蓮花が性の興奮とともに赫く花弁をふくらませてい…

中上健次『よしや無頼』(「新潮」 1982.1)

10何ページにもわたって、改行字下げなし。「 」で括られた話し言葉もその中に取り込まれて、すこすこの文章に慣れた目には、ほとんど経文のようで気絶するだろうな。かなりのエネルギーと集中力が必要。一文そのものより、文章のかたまり感に圧倒される。 …

中上健次『愛獣』(「新潮」 1988.5)

嫌悪感をいだき続けながらも、女の在る世界に引きずり込まれざるをえない男。たらい、梅の臭い、歯ブラシ......『高野聖』? 女は男を閨の中で子供を扱うように愛撫した。雨戸を閉め、いかほどに強い臭気であろうと、芳香であろうと用意に入り込めないよう硝…

中上健次『残りの花』(「新潮」 1983.1)

全集で10ページほどの掌編。ほんと短いけれど、路地の暑苦しさや、十吉と女の情感が溢れている。短編集『重力の都』の中でいちばん好きな気がする。 十吉はどんなに優しくても、女に優しすぎることはないと思った。 暗くした家の中で、女と同じように眼がき…

中上健次『重力の都』(「新潮」 1981.1)

御人にとりつかれた女を解き放つために由明がとったのは、女を異世界に突き落とし、自らも女とともに落ちていこうとすること。中上健次自らが「大谷崎潤一郎への佳品への、心からの和讃」というべく『春琴抄』が念頭にあったはず。 由明はそんな幻を女が見聴…

中上健次『重力の都』

中上健次『重力の都』 単行本 新潮文庫 『中上健次全集10』