中上健次『よしや無頼』(「新潮」 1982.1)

10何ページにもわたって、改行字下げなし。「 」で括られた話し言葉もその中に取り込まれて、すこすこの文章に慣れた目には、ほとんど経文のようで気絶するだろうな。かなりのエネルギーと集中力が必要。一文そのものより、文章のかたまり感に圧倒される。
この『よしや無頼』には『刺青』もかぶってくる。吉光の美形を刺青がいろどり、そして「見ずにすむ事のできる不具の潰れた眼は本当に仏の加護の賜」と運ばれるのは、谷崎潤一郎三島由紀夫の系譜か。