2004-03-15から1日間の記事一覧

中上健次『水の女』 (「文学界」1978.11)

浜村龍造のプロトタイプのような富森。《女を明日、浮島にある遊廓に連れていく算段をしていたと気づき、「ええんじゃ、ええんじゃ」と女を抱き寄せ》ることしかできない男。強烈なセックス描写にそそられる以上に、男の悲哀というのも変なんだけど、何かし…

中上健次『鷹を飼う家』(「すばる」 1977.2)

古座の「水が膨れ上がり、壁のように立つ」海に迫られる閉塞感の中でケモノとならざるを得ない人間。『鳳仙花』のプロトタイプ シノは嫁いでから今日の今日まで、鷹の餌の腐肉のにおい糞のにおいによくがまんしたと思った。並の女では耐えられないと思った。…

中上健次『かげろう』 (「群像」1979.1)

この「かげろう」というのは「蜉蝣」なんだろな。と、いうのは森山大道の写真集に『蜉蝣』というのがあったから。森山大道にしては珍しい裸の写真集で妙にこの『かげろう』とかぶる。読んでいると『蜉蝣』の写真が思い起される。ひたすら、底の見えない下降…

中上健次『赫髪』(「文藝」 1978.5)

宮下順子と石橋蓮司で、神代辰巳監督によって映画化された『赫い髪の女』は日活ロマンポルノ名作中の名作。まごれびゅを書く前に読んでみて、再度読み直してみた。そこで「熊野という風土」などと書いているけれど、この『赫髪』そのものは中上の中にあって…

『水の女』

1979年作品社より出された短編集 集英社文庫 中上健次全集2