花輪和一『朱雀門』

maggot2004-07-19

胸におダニ様を飼い育てる『崇親院日記』や、尻に尻狗が取り憑いた『狗尻』、この突拍子もない発想は花輪をおいてほかにないだろ。それがまことしやかに語って(描いて)しまうのが、これまた花輪ならでこそ。どこかでにやっと笑ってしまってるのだけれど、「このような日には皆で森の奥に神に会いに行きます」とページをめくると見開きででーんとくるんだから。『虫剣虫鏡』で国司の妻の顔についた虫の精緻さときたら、これまた花輪。中世の『今昔物語』や民話からひっぱては来ているがすっかり花輪の世界に引っ張り込んでいる。
朱雀門』(1986 日本文芸社)から「不倫草」を除く7編、『猫谷』(1989 青林堂)から2編、あと1編で再構成。

(1998 青林工藝舎)