チャールズ・ブコウスキー『ブコウスキーの酔いどれ紀行』

ブコウスキーはハチャメチャでおもろいという話は聞いていた。前からなんか読もうと思っていた。で、手に取ってしまったのがこの『酔いどれ紀行』。たぶんブコウスキーで最初に読むべき本ではないのかもしれない。
もっともっと難解きわまりないのかと予想していたが、予想に反してずっとまとも。パリの自分の書いた詩の朗読会でもみくちゃになった話や、ブコウスキーと彼女のリンダ・リーとが故国ドイツを旅行して、自分の生まれた家にも訪ねていったりする話は、とても興味深い。
同行したマイケル・モントフォートの写真がたくさんアップされてる。なかでもシュヴェツィンゲンの城の庭を二人で歩いている写真が好き。

幸運はほかにもあった。素晴らしい女性だ。五十六年かかって遂にリンダと巡り合ったが。待つだけのことはあった。たくさんの女たちと知り合ってこそ、男は一人の素晴らしい女性を見つけ出すことができる。運がよければ、そんな女性が待ち受けている。人生で最初に出会った女性、あるいは二番目に出会った女性と落ち着いてしまう男など、世間知らずもはなはだしい。女とはどういうものか、まったくわかっていないと言える。男はちゃんとしたコースを辿らねばならず、それは何も女と一緒に寝て、一度か二度セックスをするということを意味するのではない。何か月も何年も女と一緒に暮らしてみるということだ。それを恐れる男たちのことをわたしは責めたりしない。一緒に暮らすというのは、魂をいつ奪われてもいいような状態にすることだからだ。もちろん、男たちの中には、ただ何となく女性と一緒に暮らし、あきらめ、精いっぱいのことはやっているんだと言う者もいる。そうした男たちは山ほどいて、実際、ほとんどの者たちは休戦の白旗をあげて暮らしている。全然うまくいかないとはっきりわかっていながら、どうでもいいや、何とか間に合わせよう、また同じようなことを繰り返してもしようがない、それよりも今夜のテレビは何か面白いものがあるかな? といった調子なのだ。

 
(河出文庫)