金原ひとみ『蛇にピアス』

maggot2004-03-07

 噂の芥川賞。ピアス、刺青、身体改造....村上龍が『限りなく透明に近いブルー』で登場したとき、そのドラッグ、セックスというところで、センセーショナルに騒がれたけれど、同時代の人間として、いまさらドラッグもないだろが...って気になった。いまの金原ひとみと同時代の人たちは、ピアス、刺青というのを、表面に出してきた小説に対してどう感じるのだろう。
 ある意味で現在の文学がおかれた状況というか、売れるなら何でもいいなんていうだけの質的低下に、風穴が開けばと期待。

シバさんは、気まぐれに何度か私を抱こうとしたけど、首を絞めても苦しい顔をしなくなった私を、シバさんは抱けなかった。首を絞められると、苦しいという思いより先に、早く殺して、と思ってしまう。多分、それを口に出していたら、シバさんは私を殺してくれただろう。でも、私は殺してと言わなかった。言葉を口にするのが億劫だったのか、この世に未練があるのか、まだアマは生きていると思いたいのか、私にも分からない。ただ、私は生きている。この、アマがいない退屈な日々を生きている。シバさんに抱かれる事も出来ない退屈な日々を生きている。そして、私はつまみさえ食べるのをやめた。半年前に計った時は四二キロあった体重が、三四キロになっていた。物を食べて排泄するなんて面倒臭い事、出来ればしたくない。でも、酒しか飲まない私でも、排便をする。

単行本