花輪和一『ニッポン昔話』 (2001 小学館)

maggot2003-08-28

 桃太郎御一行様が鬼退治の凱旋からいきなり始まってしまう「桃太郎」。掲げられた鬼の生首がひどく凄惨で、犬も猿も傷ついている。が、嵐の日にその花輪桃太郎は流れてくる。桃の形をしたカプセルに入って。
 裏の畑でシロが鳴く。と、掘りかえさなくても遮光器土偶が飛びだしてくる「花咲か爺」。「一寸法師」は未来の地球外生物(ドラえもんではない!)であったり。
 「かぐや姫」にいたっては、そろそろわらじを編み始めねばならぬかと(苦笑)、しかしラストを飾る上でこの「かぐや姫」はすごい!
 花輪初心者のボクがとやかくいうこともない。偽・花輪論(前編)、偽・花輪論(後編)に非常に詳しい。そこに書かれているように、まさに《花輪は「業」そのものも描いてきたが、それ以上に業からの解脱、「業を落とす」というテーマに沿って、その作品を描いてきた》というのは全くその通りだと思える。大宰の『お伽草子はやけに斜に構えているのに対して、花輪の『ニッポン昔話』はがっぷり真正面からとっくみあっているという印象が強い。
 ところで、どこが「肉筆サイン」なのだと思ってたら、真ん中の金で書かれた「花」、そして女の子の眼はひとつひとつ描きこまれたものなのであった。ビッグコミックオリジナル増刊号『驚天動地シリーズ・和一怪奇おかし話』からの単行本化。

20011010 Wed