ベン・シモンズ『東京欲望』 (2000 小学館)

 パッと見におもしろそうなので図書館で借りてきたけど、どこかちがう。演出された偶然性、偶然性の演出というのは、こと写真に限ってはつまらない。スリルがないんだよ。
 例えば最も目をひく一枚(表紙にも使われている)に、旭屋書店のカバーをつけた本を読む女の顔(顔は本のかげになって見えない)の写真があるが、これはよく見てみると、電車で立って本を読んでいるのを、その前の座席から隠し撮りしたような構図になっている。隠し撮りならブレや構図の歪さがあっても不思議でないのに、妙に決まったショットになって写っている。ボクはてっきりはじめ、誰か友だち(あるいは恋人)あおむけに寝転がって本を読んでいるショットに見えてしまった。これが電車内の下からのアングルとわかったとたんに、そこに暗黙の了解というのが成り立っているのが見えて、とてもつまらなくしてしまっているんだよ。

20030320 Thu