筒井康隆『ロートレック荘事件』

史上最低の推理小説

 はっきり言ってこんなのは推理小説じゃないな。読者を小バカにするにも程がある。推理小説じゃなかったら、ミステリーかといって、こんなミステリーだったら、そこらの印税生活志望の兄ちゃんにも楽に書ける。トリック自体なぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んもない。
 その筒井康隆自身が仕組んだトリックさえ、第1章と第2章を注意深く読んだら見抜いてしまえる代物。そのトリックのせいで全編通してしっくりこなくなってんだから。帯というか、カバーというか、要は表紙に《映像化不能》と書かれてるけれど、映像化してごらんよ。できるわけないから。その理由はすべてこのトリックのせい。怪しげなものが出てくるとか、とうてい映像にすることが不可能なんじゃなくて、映像化することでトリックが破綻を来すから。
 表紙の《この作品は二度楽しめます》だって。けっ。著者本人が楽しんでんじゃないか。読むだけ時間の無駄ってもの。
 ますますむかついてきた。《書評家諸氏はトリックを明かさないようにお願いします》と書いてるけど、バラしたれ。いちおう、font color=whiteで書くから、ネタバレOKの人はマウスでなぞってんか。
つまり物語を、犯人と犯人でないもうひとりが、同じ「おれ」という一人称で語ってる。第1章は犯人でないほう、第2章は犯人。以後、第16章まで、この二人が入れ替わりで語っていく。ちなみに犯人でないほうの名前は第十七章の謎解きになるまで一度も出てこない。P47に示された各部屋に滞在している人物を図にも示されていない。これは露骨な登場人物隠しなだけで、その登場人物を隠すことでやっと物語が成り立つ。だから《映像化不能》なのだ。
 こういうの書いて平気で出版できるなんてどうかしてる、読者を舐めきってる、地に堕ちてるよ。こんなもの1300円も出して買ったらぶち切れるだろう。ボクはBOOKOFF100円だけれど、ブチ切れた。時間の無駄だもん。ロートレックの絵を100円で買ったと思って慰めるしかない。もちろん売り飛ばし。
2001/11/12