尾辻克彦『贋金づかい』

maggot2003-12-25

 退屈。贋金だからかの千円札事件につながるのはまだしも、トマソンから抜け出せないのは、さすがに退いてしまう。巨人のトマソンがどうたらとか余計なんだよね。
 『超芸術トマソン』の一節「ビルに沈む町」で紹介された天徳湯の無用エントツが異界への通路という設定自体はわるくないけれど、『超芸術トマソン』からの単なる焼き直しを引っ張られると、赤瀬川原平先生ってのはこれしかないんかいって気になるのだ。そして絹丸、良枝、目黒、社長といった人物が、とぎれとぎれで、実体をもってこないようではねぇ。。。幻想小説ってわけにもいかず、なんとも中途半端なのにはまいった。
 やっぱり赤瀬川先生というのは《超芸術家》とは言えても、《作家先生》じゃないみたい。その証拠に《尾辻克彦》名義ではもう書いていないようだし。

(1988 新潮社)