篠原勝之『糸姫』 (1983 青林堂)

maggot2003-08-20

 原作=唐十郎。1975年9月の状況劇場の『糸姫』の原作。

 ボクが篠原勝之をはじめて知ったのは、やっぱり状況劇場のこと。状況劇場の芝居のひとつの頂点だと思う74年の『唐版・風の又三郎』のポスター、それから戯作本の装丁もこの篠原勝之ことクマさんだった。『風の又三郎』の一作前の73年『海の牙』からこの75年『糸姫』を経て79年『青頭巾』までのおよそ7年間に11作の公演ポスターなどの宣伝美術を一手に引き受けてきた。それだけでなく、78年『ユニコン物語』ではクマさん製作のドリルつき自転車が舞台に上がる。《あの自転車は、三十代を状況劇場とともに過ごしたキネンヒ的作品(嵐山光三郎)》
 ところで、この時期の状況劇場はボクの個人的事情のせいなのか、ずこーんと抜けてしまってる。それが悔しくてしかたない。『風の又三郎』のちょっとうつむき加減に赤紫のストールを風に翻した女のイラストにあんなにこころ踊らせていたのに。
 このクマさんの『糸姫』ははじめ75年の「ガロ」に掲載された。同じようにこの時期あたりから「ガロ」的な環境からもすっぽりと抜け落ちてしまってたもんだから、この『糸姫』にボクが巡りあうまでに25年もの歳月が経ってしまってたというわけ。だからまんだらけでこの『糸姫』を見つけたときなんだこれはぁーとびっくりしてしまった。第一、クマさんがコミックを描いていたというのさえ知らなかった。(といってもコミック本として出されたのはこれ一冊のようだけれど)
 なんか前置きばっかり(^_^ゞ
 まずは表紙、くきっとしたライン。思うにこのクマさんの描く女のように、頬から顎にかけてのラインのきれいであること、というのがボクの好きになる女の第一の条件なのだ。
 肝心の本編は、一見、つげ義春林静一篠原勝之がケンカして描いたようでもあるな。当然、世界は完璧に唐の世界だけれど、原作の唐の戯曲さえも読んでないから、このクマさんの『糸姫』と比較するわけにもいかないけど、ボク個人としては唐を通して見てしまうから、「唐の作品」として見てしまうのが辛い。クマさんが唐に一番べったりだったときだから仕方ないかもしれないね。それくらい唐というのはすごい人だった。でも、唐というフィルターをもってなかったらもってなくても、むしろもってないほうが純粋に「篠原の作品」として楽しめるんじゃない。ラストのこま(P70)は、その後のクマさんのオブジェ製作の出発点だったのかなあと思う。
 で、どちらかというと、『におい横丁』(76年「ガロ」)のほうが、ボクは「篠原の作品」として楽しめた。どこか、『ゲンセン館』だったりもするのだけれど、浜昼顔に埋め尽くされた一枚は『紅い花』に並ぶくらい美しい。
状況劇場『糸姫』キャスト
  絵馬=李礼仙、原価=根津甚八、姫小路=小林薫、婦長=不破万作

20011102 Fri