水上勉『雁の寺』

 読もう、読もう、読むつもりでほったらかしていた水上勉。『五番町夕霧楼』とか『越後つついし親不知』とか、読んだつもりで、実は読んでいなかった水上勉。やっと読んだわ。といっても四部作のうちの最初の『雁の寺』だけ。このあとに続く『雁の村』『雁の森』『雁の死』の四部作をのちに『雁の寺』としてまとめているというが、一作目の『雁の寺』の余韻の引き方には、あとの三部作はいらないんじゃないかとも思える。読みたくない、ボクの世界の中だけで、そのあとの慈念、里子を生きさせておきたい。