川端康成『水晶幻想』(1931)

 わけわかんねぇ(^_^ゞ 犬の人工授精。発生学の研究に、精子、卵を顕微鏡で見る夫。三面鏡を見る女。人間の体外受精は?鏤められたことばの洪水。うはぁ〜〜降参。 ごくごく日本的な作家(それ故にノーベル文学賞を受賞したんでしょ)、川端康成が、ヨーロッパ的インテリとして模索していた段階の実験的幻想短編、とでも言うとこ。

彼女の古里の古い海港の教会で、マリア様−愛らしい私だつたけれど、なにをお詫びするつもりだつたのか、忘れてしまつたわ。重力、梃子、秤、慣性、摩擦、振子と時計、ポンプ。あら、尋常五年の三学期の理科の目録だわ。ジグムンド・フロイドと十字架。でも、だけど、女王蜂は一生にただの一度だけ交尾をするのだつたわ。ただの一度、巣の外で。家庭の外で。一つの巣に一匹の女王蜂。百匹くらゐの雄蜂、二萬以上の働き蜂。春の日の蜂の羽音。ピペットピペットと聞こえる、汽車の車輪。ホテルの白蚊帳。春ではない、夏であつた。蜜月旅行。

川端康成『禽獣』(1935)

 川端康成が自作中でもっとも嫌った作品で、自己嫌悪の対象として主人公に投影したとされる。禽獣というのはいまでいうペット。小鳥、犬、などの禽獣に対する愛玩の裏返しとしての冷酷さが、女に対してまで及んでくるという川端康成ならではの耽美さが、この短かい小編におしこめられているのはさすが。